口腔粘膜炎・口内炎のCTCAE評価と薬局対応

🩺 副作用・CTCAE評価

口腔粘膜炎・口内炎

口腔内の発赤・潰瘍だけでなく、痛みと食事・飲水への影響から重症度を評価します。感染、出血、脱水、免疫関連有害事象などを見逃さず、口腔ケアの継続と治療施設への連絡を判断します。

  1. 1.Grade評価
  2. 2.追加確認
  3. 3.口腔ケア・対応
  4. 4.施設へ連絡

● まず重症度を確認

01

CTCAEグレード評価

重症度CTCAE v6.0をもとにした評価薬局での聞き取り例
Grade 1
軽度
無症状または軽度の症状。介入を必要としない。違和感や軽いしみはあるが、普段どおり食べたり飲んだりできる。
Grade 2
注意・要連絡
中等度の疼痛、または経口摂取を妨げない潰瘍がある。食事内容の変更が必要。痛みや潰瘍のため、軟らかい物・刺激の少ない物へ変更しているが、経口摂取はできる。
Grade 3
高度・速やかに連絡
強い疼痛があり、経口摂取に支障を来している。痛みで食事や飲水が十分にできない。鎮痛薬や栄養・水分管理の検討が必要。
Grade 4
生命を脅かす
生命を脅かす状態。緊急の医学的介入が必要。気道・全身状態への重大な影響など、緊急対応を要する。
Grade 5
死亡
口腔粘膜炎に関連する死亡。―

※ NCI CTCAE v6.0「Mucositis oral」の成人Gradeをもとに、薬局で聞き取りやすい表現を補足しています。潰瘍の数や大きさだけでなく、疼痛、食事内容の変更、経口摂取への影響を総合して評価します。

!

この時点で速やかな連絡を考える所見

  • 痛みで食事・飲水が十分にできない、尿量低下やふらつきがある
  • 発熱・悪寒・強い倦怠感を伴う、または好中球減少が疑われる時期である
  • 口腔内出血が止まりにくい、広範なびらん・水疱・急速な悪化がある
  • 嚥下困難、流涎、声の変化、呼吸しづらさがある
  • 眼症状、皮膚の水疱・びらん、陰部など他の粘膜症状を伴う

02

患者から確認すること

✓

Assessment

  • 発現時期
    治療開始・投与から何日目か、前コースでも起きたか
  • 部位・範囲
    舌、頬粘膜、口唇、歯肉、口蓋、咽頭、片側か広範か
  • 見た目
    発赤、潰瘍、白苔、水疱、出血、亀裂、腫脹の有無
  • 痛み
    安静時・食事時の痛み、会話・歯磨き・睡眠への影響
  • 食事・飲水
    食事内容の変更、摂取量、体重、尿量、飲み込みづらさ
  • 感染・全身症状
    発熱、悪寒、倦怠感、膿、口臭、頸部腫脹
  • 口腔ケア
    歯磨き、含嗽、保湿、義歯、歯科受診の状況
  • 支持療法
    含嗽薬、鎮痛薬、ステロイド、抗真菌薬等の使用と効果

電話では見た目を評価しにくいため、可能であれば患者同意のもと画像共有の可否を確認し、治療施設の運用に従います。白苔が拭えるかを無理に患者へ試させないでください。

03

治療との関係と鑑別を整理する

細胞障害性抗がん薬・放射線

びまん性の発赤、びらん、潰瘍として現れます。頭頸部放射線治療では照射野、化学療法では投与後の時期や骨髄抑制の時期も確認します。

mTOR阻害薬関連口内炎

エベロリムスなどでは、治療早期に境界明瞭なアフタ様病変として現れることがあります。一般的な化学療法性粘膜炎と外観・対応が異なるため、処方元の指示を確認します。

感染症

口腔カンジダ症、単純ヘルペス、細菌感染などを鑑別します。白苔、水疱・痂皮、片側性、発熱、急速な拡大は治療施設へ共有します。

免疫療法・その他

免疫チェックポイント阻害薬では苔癬様、扁平苔癬様、広範な粘膜障害など多様です。義歯・尖った歯による外傷、口腔乾燥、栄養不足、他薬剤も確認します。

発熱+口腔粘膜障害は感染の入口になり得ます。
好中球減少が想定される時期では、通常の口内炎としてセルフケアのみで様子を見ず、当日中の施設連絡を検討します。

04

薬局でできる対応

+

基本の口腔ケア

  • 清潔を保つ
    毛先の軟らかい歯ブラシで無理なく清掃する
  • 低刺激の含嗽
    施設指示の含嗽液、または刺激の少ない含嗽を行う
  • 保湿する
    口腔用保湿剤やリップ等で乾燥を軽減する
  • 刺激を避ける
    熱い・辛い・酸味・硬い食品、飲酒、喫煙を避ける
  • 食べ方を調整
    軟らかく冷ました物を少量ずつ試す
  • 義歯を確認
    接触痛や傷がある場合は使用時間を調整し歯科へ相談する

強い疼痛、出血、著しい血小板減少が疑われる場合のブラッシングやフロスは、治療施設・歯科の指示を優先します。アルコールを含む洗口剤など刺激の強い製品は避けます。

処方された支持療法を確認

  • 含嗽薬:調製方法、1回量、含嗽時間、回数、吐き出すかどうかを確認します。
  • 鎮痛薬:食事前使用の指示、定時・頓用、眠気、最大使用回数を確認します。
  • 局所ステロイド:mTOR阻害薬関連口内炎など、適応目的・塗布部位・含嗽後の扱いを確認します。
  • 抗真菌薬・抗ウイルス薬:感染症が疑われ処方された場合は用法と相互作用を確認します。

口腔内の痛みが強く、内服・含嗽そのものが困難な場合は、処方があっても十分に使用できません。剤形・投与経路を含め、治療施設へ相談します。

エビデンスを実務に落とす際の注意
  • MASCC/ISOOは、化学療法・頭頸部放射線治療・造血幹細胞移植における複数要素を組み合わせた基本的口腔ケアを支持しています。
  • 生理食塩水・重曹水含嗽は十分な比較データが限られますが、口腔清潔と快適性を助ける低刺激の含嗽として専門家意見があります。
  • クロルヘキシジンは頭頸部放射線治療による口腔粘膜炎の予防目的では推奨されません。ただし、口腔感染症に対する別の適応まで否定するものではありません。
  • ボーラス5-FU投与中30分の口腔冷却は予防として推奨されていますが、治療施設で実施を判断する介入です。

05

Grade別に対応を判断する

Grade 1が疑われる

普段どおり摂取可能

  • 口腔ケア・保湿を継続
  • 支持療法の使用状況を確認
  • 悪化時の連絡基準を共有

Grade 2が疑われる

食事内容の変更が必要

  • 治療施設へ早めに情報共有
  • 鎮痛・局所治療の追加を相談
  • 体重・摂取量・脱水を追跡

Grade 3以上・警告症状

経口摂取に支障・緊急性あり

  • 速やかに治療施設へ連絡
  • 感染・脱水・出血を報告
  • 緊急性に応じ受診へつなぐ

抗がん薬を自己判断で中止・再開しない
抗がん薬の休薬・減量・再開は、薬剤・Grade・治療目的によって異なります。次回服用前に判断が必要な場合は処方元へ確認します。

06

治療施設へ連絡する目安

!

早めの連絡を検討

  • Grade 2以上が疑われる、または短期間で悪化している
  • 痛みで食事・飲水・服薬・会話・睡眠に影響している
  • 発熱、白苔、水疱、出血、膿、強い口臭など感染・出血を疑う
  • 体重減少、尿量低下、口渇、ふらつきなど脱水が疑われる
  • 処方された支持療法を使用できない、または使用しても改善しない
  • 次回抗がん薬の服用・投与前に継続可否の確認が必要である
治療施設へ伝える項目
  • 抗がん薬・放射線治療の名称、投与日・内服日、何日目から発現したか
  • 部位、範囲、発赤・潰瘍・白苔・水疱・出血等の所見
  • 疼痛の程度、食事内容の変更、食事量・飲水量、体重・尿量
  • 発熱、倦怠感、嚥下困難、皮膚・眼・他粘膜症状など
  • 含嗽薬・鎮痛薬・局所薬等の使用方法、使用回数、効果
  • 薬局で推定したGrade、行った説明、患者の受診可否・連絡先
トレーシングレポート・情報提供の記載例

○月○日より舌縁・頬粘膜に発赤と複数の潰瘍が出現。食事時疼痛があり、通常食から軟食へ変更していますが、水分・内服は保持可能です。発熱・出血・水疱はなく、食事量は普段の約6割、尿量低下なし。処方された含嗽薬を1日○回使用していますが改善に乏しく、CTCAE Grade 2相当を疑います。鎮痛・局所治療の追加および次回治療前の評価をご検討ください。

07

参考資料

このページの位置づけ
本ページは保険薬局での患者確認と治療施設との連携を支援するための一般情報です。感染症等の診断、抗がん薬の休薬・再開、局所薬・抗感染症薬の追加や変更は、治療施設の指示および最新の電子添文・ガイドラインを優先してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする