悪心・嘔吐のCTCAE評価と薬局対応

🩺 副作用・CTCAE評価

食事・水分摂取と補液の必要性から重症度を判断

悪心と嘔吐は別々にGradeを評価します。悪心は食事・水分摂取への影響、嘔吐は補液などの医学的介入の必要性が主な評価軸です。抗がん薬による症状と決めつけず、発現時期と随伴症状から他の原因も確認します。

  1. 1.Grade評価
  2. 2.追加確認
  3. 3.原因・時期
  4. 4.対応・施設連絡

● まず重症度を確認

01

CTCAEグレード評価

悪心(Nausea)

重症度CTCAE v6.0をもとにした評価薬局での聞き取り例
Grade 1
軽度
食欲低下はあるが、食習慣は変わっていない。食べる量や内容は普段とほぼ変わらない。
Grade 2
注意・要連絡
経口摂取が低下しているが、著しい体重減少、脱水、栄養不良はない。静脈内治療が必要な場合を含む。食事量や水分量が明らかに減った。点滴などの対応が必要になっている。
Grade 3
高度・速やかに連絡
経口で必要なカロリーまたは水分を摂取できず、経管栄養、中心静脈栄養または入院が必要。水分も十分に取れない。入院や栄養管理が必要な状態。

嘔吐(Vomiting)

重症度CTCAE v6.0をもとにした評価薬局での聞き取り例
Grade 1
軽度
医学的介入を必要としない。吐いたが、水分は取れており特別な処置は必要ない。
Grade 2
注意・要連絡
外来での静脈内補液の開始、または医学的介入が必要。制吐薬の追加や点滴など、医療者による対応が必要。
Grade 3
高度・速やかに連絡
経管栄養または中心静脈栄養の開始、もしくは入院が必要。水分を保てず、入院や栄養管理が必要な状態。
Grade 4
生命を脅かす
生命を脅かす状態。意識障害や循環不全などを伴い、緊急対応が必要。
Grade 5
死亡
嘔吐に関連する死亡。―

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Grade評価のコツ

嘔吐回数は必ず確認しますが、CTCAE v6.0の嘔吐Gradeは回数ではなく、補液・医学的介入・入院などの必要性で評価します。悪心は「食べられるか」「飲めるか」「普段からどの程度減ったか」を具体化します。

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この時点で速やかな連絡を考える所見

  • 水分を飲んでも吐き、保てない
  • 尿量低下、口腔内乾燥、強い口渇、立ちくらみ、ふらつきがある
  • 吐血、コーヒー残渣様の嘔吐、強い腹痛・腹部膨満がある
  • 強い頭痛、意識変容、けいれん、麻痺などの神経症状がある
  • 発熱、悪寒、著しい倦怠感を伴う

※NCI CTCAE v6.0の成人における「Nausea」「Vomiting」をもとに、薬局で聞き取りやすい表現を補足しています。例示のみでGradeを確定せず、摂取状況、脱水、必要な医学的介入を総合して評価します。

02

患者から確認すること

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Assessment

  • 治療と発現時期
    抗がん薬・放射線治療の実施日、内服開始日、何日目から出たか
  • 悪心の程度
    食欲、食事量、水分量、普段との比較、体重変化
  • 嘔吐の状況
    24時間の回数、最後に吐いた時刻、吐物の性状、水分を保てるか
  • 脱水所見
    尿量・尿色、口渇、口腔内乾燥、立ちくらみ、ふらつき
  • 制吐薬
    定時薬・頓服薬の名称、服用時刻、回数、効果、飲んでも吐いたか
  • 消化器症状
    腹痛、腹部膨満、便秘、下痢、排便・排ガスの有無
  • 随伴症状
    発熱、頭痛、めまい、意識変容、視覚異常、著しい倦怠感
  • 併用薬・既往
    オピオイド、抗菌薬、糖尿病薬、腎・肝機能、過去コースの症状

「気持ち悪いですか?」だけでなく、摂取量・嘔吐回数・尿量・できなくなった動作を具体化します。可能なら症状と制吐薬使用時刻を記録してもらいます。

03

発現時期と原因を整理する

がん薬物療法との時間関係

急性

抗がん薬投与後24時間以内。投与当日からの発現と予防薬の内容を確認します。

遅発性

投与24時間後以降。帰宅後から数日続く症状と、遅発期の制吐薬使用を確認します。

突出性

予防的制吐療法を行っていても発現し、追加の制吐治療を必要とする症状です。

予期性・治療抵抗性

治療前から生じる場合や、前コースの制吐不良が次コースでも続く場合があります。次回治療前の情報共有が重要です。

抗がん薬以外の原因も確認

消化管・薬剤

便秘、胃炎、胃排出遅延、腸炎、消化管閉塞、オピオイドや抗菌薬などの併用薬。

感染・代謝

感染症、脱水、腎・肝機能障害、高カルシウム血症、低ナトリウム血症、血糖異常など。

中枢神経・前庭

脳転移、頭蓋内圧亢進、強い頭痛、めまい・前庭障害など。神経症状を伴う場合は速やかに連絡します。

内分泌・irAE

免疫チェックポイント阻害薬使用中・終了後では、副腎不全や下垂体炎なども鑑別に挙がります。倦怠感、食欲低下、低血圧などを確認します。

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いつものCINVと違う症状を見逃さない

治療との時間関係が合わない、前コースより急激に強い、腹痛・発熱・神経症状を伴う場合は、単純な抗がん薬誘発性悪心・嘔吐として扱わず治療施設へ共有します。

04

制吐薬の使用状況を確認する

  • 予防薬
    処方どおり服用できたか、服用日・服用時刻は正しいか
  • レスキュー薬
    使用条件、使用回数、最終使用時刻、効果はどうか
  • 服用後の嘔吐
    服用後何分で吐いたか、錠剤が吐物に見えたか
  • 剤形・経路
    内服を保持できず、経口薬が機能しにくい状態ではないか
  • 制吐薬の副作用
    便秘、眠気、ふらつき、錐体外路症状、頭痛など
  • 相互作用・重複
    同効薬の重複、QT延長リスク、CYPを介する相互作用など

吐いた直後の再服用は薬剤・経過によって判断が異なります。患者の自己判断で追加服用せず、治療施設または処方元へ確認します。

05

薬局での対応を判断する

Grade 1が疑われる

摂取を維持でき、介入不要

  • 予防薬・レスキュー薬の使用を確認
  • 少量ずつの水分・食事を案内
  • 悪化時の連絡基準を共有

Grade 2が疑われる

摂取低下・医学的介入が必要

  • 次回受診まで待たず施設へ連絡
  • 補液・制吐薬追加の必要性を相談
  • 次回抗がん薬前の判断を確認

Grade 3以上・警告症状

水分保持困難・入院等が必要

  • 速やかに治療施設へ連絡
  • 脱水・出血・腹部・神経所見を報告
  • 緊急性に応じ受診へつなげる

食事・水分摂取の説明

  • 少量をこまめに
    一度に多く取らず、飲める量から分けて摂取する
  • におい・温度を調整
    においの強い物を避け、冷たい物や室温の物も試す
  • 無理に食べない
    食べられる時間帯に、消化しやすい物を少量から取る
  • 脱水を観察
    飲水量だけでなく尿量・尿色、口渇、ふらつきを確認する

心不全・腎機能障害などで水分や塩分の制限がある場合は、治療施設の指示を優先します。水分を保持できない場合はセルフケアのみで経過を見ません。

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抗がん薬・制吐薬を自己判断で中止・追加しない

抗がん薬の継続・休薬・再開、制吐薬の追加・再服用は、薬剤と治療状況によって判断が異なります。次回服用前に判断が必要な場合は、治療施設へ確認します。

06

治療施設へ連絡する目安

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早めの連絡を検討

  • 悪心または嘔吐で食事・水分摂取が明らかに低下している
  • 水分を保持できない、尿量低下・ふらつきなど脱水が疑われる
  • 処方された制吐薬を使用しても改善しない、または内服できない
  • 腹痛、腹部膨満、排便・排ガス停止など閉塞を疑う所見がある
  • 吐血、発熱、強い頭痛、意識変容、けいれんなどを伴う
  • 次回の抗がん薬服用前に継続可否の確認が必要である
治療施設へ伝える項目
  • 抗がん薬・放射線治療の内容、投与日、内服状況、次回予定
  • 症状の発現日と治療からの時間、悪化・改善の経過
  • 悪心による食事量・水分量の変化と体重変化
  • 24時間の嘔吐回数、最終嘔吐時刻、吐物の性状
  • 尿量・尿色、口渇、ふらつきなど脱水所見
  • 腹痛、腹部膨満、排便・排ガス、発熱、頭痛、神経症状
  • 推定した悪心Gradeと嘔吐Grade
  • 制吐薬の名称、服用時刻、使用回数、効果、副作用
  • 薬局で行った説明と、患者が次回服用を予定する時刻
トレーシングレポート・情報提供の記載例

CAPOX施行後3日目。昨日から悪心が増悪し、食事は通常の3割、水分は約500 mL/日です。本日24時間以内に3回嘔吐し、頓用の制吐薬を2回使用しましたが改善は一時的です。尿量減少と立ちくらみがあり、悪心Grade 2相当、嘔吐は補液等の医学的介入が必要なGrade 2相当を疑います。発熱・腹痛・腹部膨満・頭痛はありません。対応をご指示ください。

このページの位置づけ

本ページは保険薬局での患者確認と治療施設との連携を支援するための一般情報です。個別患者の診断、抗がん薬の休薬・再開、制吐薬の追加・変更は、治療施設の指示および最新の電子添文・ガイドラインを優先してください。

最終確認:2026年9月

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