ざ瘡様皮疹のCTCAE評価と薬局対応

🩺 副作用・CTCAE評価

ざ瘡様皮疹

EGFR阻害薬などでみられる、顔・頭皮・胸部・背部を中心とした毛包性の丘疹・膿疱です。通常のにきびとは異なり、面皰を伴わないことが多く、発現範囲だけでなく、かゆみ・痛み、日常生活や心理面への影響、感染徴候から重症度を評価します。

  1. 1.Grade評価
  2. 2.皮疹・感染確認
  3. 3.スキンケア確認
  4. 4.施設へ連絡

● BSA、症状、生活・心理面への影響、感染徴候で評価

01

CTCAEグレード評価

CTCAEの版について
本ページでは一貫して「ざ瘡様皮疹」と表記します。Grade表は、この有害事象が「Rash acneiform(ざ瘡様皮疹)」として独立して掲載されているCTCAE v5.0に基づきます。2025年公開のCTCAE v6.0では同名の独立項目が削除されているため、v5.0とv6.0を混在させず、使用した版を明記します。

重症度CTCAE v5.0「Rash acneiform」薬局での確認ポイント
Grade 1
軽度
丘疹・膿疱が体表面積(BSA)の10%未満。かゆみ・圧痛の有無は問わない。顔や頭皮など限局した範囲で、普段の生活への影響はない。
Grade 2
注意・要連絡
丘疹・膿疱がBSAの10~30%で、かゆみ・圧痛の有無は問わない/心理社会的影響がある/身の回り以外の日常生活動作に制限がある/BSA 30%超でも症状がない、または軽度。外出・仕事・対人交流、洗顔・整容等に支障がある。範囲が広い、痛みやかゆみが増えている。
Grade 3
高度・速やかに連絡
丘疹・膿疱がBSAの30%超で中等度~高度の症状を伴う/身の回りの日常生活動作に制限がある/局所の重複感染があり経口抗菌薬を要する。入浴・着替え・服薬等の基本動作に支障がある。強い痛み、膿・痂皮・熱感等の感染徴候がある。
Grade 4
生命を脅かす
生命を脅かす状態/丘疹・膿疱の範囲を問わず、広範な重複感染があり静注抗菌薬を要する。発熱・全身状態悪化を伴う広範な感染など、緊急対応が必要。

※ CTCAE v5.0ではGrade 5は設定されていません。BSA 1%はおおむね患者本人の手掌(指を含む)1枚分が目安ですが、顔面など露出部では面積が小さくても心理社会的影響が大きく、Grade 2に該当し得ます。

!

典型的なざ瘡様皮疹として様子を見ず、速やかに連絡する所見

  • 発熱、悪寒、全身倦怠感を伴う
  • 発赤・腫脹・熱感が急速に広がる、膿・悪臭・厚い痂皮がある
  • 強い痛み、出血、皮膚の亀裂があり、食事・睡眠・基本動作に支障がある
  • 水疱、びらん、皮膚剥離、口腔・眼・陰部などの粘膜病変がある
  • まぶた周囲の腫れ、眼痛、充血、視力変化など眼症状がある
  • Grade 3以上が疑われる、または数日で明らかに悪化している

水疱・粘膜病変・皮膚剥離は、重篤な薬疹など別の有害事象を疑う所見です。自己判断で抗がん薬を中止せず、治療施設の緊急連絡手順に従います。

02

患者から確認すること

✓

Assessment

  • 発現と経過
    初発日、投与開始・投与日との関係、急速な増悪
  • 部位・範囲
    顔、頭皮、胸部、背部、四肢、BSAの目安
  • 皮疹の形
    赤み、丘疹、膿疱、痂皮、面皰、水疱、びらん
  • 自覚症状
    かゆみ、痛み、圧痛、灼熱感、睡眠への影響
  • 感染徴候
    膿、熱感、腫脹、悪臭、急な拡大、発熱
  • 日常生活
    洗顔、整容、衣服、仕事、外出、対人交流
  • 心理面
    見た目による不安、マスクで隠す、外出を避ける
  • 支持療法
    保湿・日焼け止め・外用薬・内服薬の使用状況
  • 刺激物
    スクラブ、ピーリング、アルコール製品、市販にきび薬
  • 併発皮膚障害
    乾燥、亀裂、爪囲炎、頭皮症状、眼周囲症状

写真を同じ明るさ・距離で記録してもらうと経過を共有しやすくなります。ただし、写真だけで感染やGradeを決めず、痛み・生活への影響・全身症状を必ず聞き取ります。

03

原因薬・発現時期・特徴

主な原因薬

抗EGFR抗体のセツキシマブ・パニツムマブ、EGFR阻害薬のゲフィチニブ・エルロチニブ・アファチニブ・オシメルチニブ等でみられます。MEK阻害薬など他の分子標的薬でも類似した皮疹が起こり得ます。

発現時期

治療開始後1~2週間頃に出現することが多く、早期に目立ちます。その後、乾燥・亀裂・爪囲炎など別の皮膚障害が加わることがあるため、皮疹が落ち着いた後も継続して確認します。

好発部位と見た目

皮脂分泌の多い顔、頭皮、前胸部、上背部に生じやすい毛包性の丘疹・膿疱です。通常のにきびにみられる面皰が目立たない点が特徴です。

治療効果との関係

一部のEGFR阻害薬では皮膚障害と治療効果の関連が報告されていますが、皮疹を我慢すべきという意味ではありません。早期から支持療法を行い、治療継続を支えることが重要です。

通常のにきびとの違い
  • 薬剤開始後の時間関係が明確で、顔・頭皮・胸部・背部に急に出現しやすい
  • 白色面皰・黒色面皰は目立たず、赤い丘疹や膿疱が中心
  • 乾燥や皮膚バリア障害を伴いやすく、一般的なにきび治療薬で刺激が増すことがある
  • 治療は原因薬と重症度、感染の有無を踏まえて治療施設が判断する

04

薬局でできる対応

+

皮膚刺激を減らし、指示された支持療法を続ける

  • やさしく洗う
    ぬるま湯と低刺激性洗浄料を使い、こすらず押さえて拭く
  • 保湿する
    香料・アルコール等の刺激が少ない保湿剤を継続する
  • 紫外線を避ける
    SPF30以上の日焼け止め、帽子、衣服を活用する
  • 触らない
    丘疹・膿疱をつぶさず、掻破や強いマッサージを避ける
  • 摩擦を減らす
    髭剃り、マスク、襟、寝具等による刺激を調整する
  • 経過を記録
    部位・写真・痛み・生活への影響・使用薬を記録する

一般用のにきび薬、スクラブ、ピーリング、アルコールを多く含む化粧品は、乾燥・刺激を悪化させることがあります。治療施設から指示されていない製品を自己判断で追加しないよう説明します。

支持療法の処方監査・服薬支援

  • 外用ステロイド:塗布部位、回数、期間、顔・頭皮・体幹での使い分けを確認します。強さの異なる製剤を取り違えないよう、実際の塗り分けを患者と共有します。
  • 保湿剤:治療開始時からの継続が重要です。塗布量・回数、洗顔・入浴後の使用、刺激感や毛包炎様症状の変化を確認します。
  • テトラサイクリン系抗菌薬:抗炎症目的を含めて予防的・治療的に用いられることがあります。用法、飲み忘れ、消化器症状、めまい、光線過敏等を確認し、薬剤ごとの服用上の注意を説明します。
  • 感染が疑われる場合:漫然と自己判断で抗菌薬を追加せず、培養の要否を含め治療施設へ相談します。急速な悪化や全身症状があれば速やかに連絡します。
予防的スキンケアのエビデンス

パニツムマブを用いたSTEPP試験では、保湿剤、日焼け止め、外用ステロイド、ドキシサイクリンを治療開始前から6週間行う予防的介入により、反応的介入と比べGrade 2以上の皮膚障害が減少しました。日本人を対象としたJ-STEPP試験でも予防的介入の有用性が示されています。ただし、薬剤・疾患・患者背景により処方は異なるため、すべての患者へ同一レジメンを自己判断で適用せず、治療施設のプロトコルを優先します。

05

Grade別に対応を判断する

Grade 1が疑われる

BSA 10%未満・生活への影響なし

  • 部位・範囲・症状を記録
  • 施設指示の予防・支持療法を継続
  • 悪化・感染時の連絡基準を共有

Grade 2が疑われる

範囲拡大・生活や心理面に影響

  • 次回受診を待たず治療施設へ共有
  • 外用・内服・保湿の実施状況を確認
  • 感染徴候と具体的な生活障害を伝える

Grade 3以上・警告症状

基本動作に影響・感染・全身症状

  • 速やかに治療施設へ連絡
  • 体温、感染、水疱・粘膜病変を確認
  • 施設の指示に従い受診へつなげる

抗がん薬の扱い
休薬・減量・中止は、原因薬の電子添文・治療プロトコルと患者状態をもとに治療施設が判断します。皮疹の程度だけで薬局から服用中止を指示せず、必要な情報を速やかに共有します。

06

治療施設へ連絡する目安

!

早めの連絡を検討

  • Grade 2以上が疑われる、または顔面など露出部の皮疹で心理・社会生活への影響がある
  • 数日で範囲が広がる、かゆみ・痛みが強くなる、睡眠や食事に影響する
  • 処方された外用薬・内服薬を使用しても改善しない、または副作用で継続できない
  • 膿・痂皮・熱感・腫脹・悪臭・発熱など感染を疑う
  • 水疱、びらん、粘膜病変、皮膚剥離、眼症状を伴う
  • 抗がん薬の次回投与・継続前に皮膚評価が必要と考えられる
治療施設へ伝える項目
  • 原因と考える治療薬、開始日、投与日・コース、皮疹の初発日
  • 部位、範囲、BSAの目安、丘疹・膿疱・痂皮・水疱等の形態
  • かゆみ・痛み・圧痛の強さと、睡眠・仕事・外出・基本動作への影響
  • 発熱、膿、熱感、腫脹、悪臭、急速な拡大等の感染徴候
  • 保湿剤、日焼け止め、外用薬、抗菌薬の名称・用法・実施状況・効果
  • 市販にきび薬・化粧品・他の外用剤の使用状況
  • 推定したCTCAE v5.0 Gradeと、写真の有無、患者の希望
トレーシングレポート・情報提供の記載例

パニツムマブ開始○日後から、顔面・頭皮・前胸部に赤い丘疹・膿疱が出現しています。顔面を中心にBSA 10%未満ですが、圧痛とかゆみがあり、見た目を気にして外出を避けています。発熱、急速に広がる発赤、熱感、悪臭、水疱・粘膜病変はありません。保湿剤・日焼け止めは継続、処方された外用薬は1日○回使用しています。心理社会的影響を伴うため、CTCAE v5.0「Rash acneiform」Grade 2相当を疑います。感染の有無と支持療法の再評価をご検討ください。

07

参考資料

このページの位置づけ
本ページは保険薬局での患者確認と治療施設との連携を支援するための一般情報です。皮疹の診断、感染の鑑別、外用・内服治療、抗がん薬の休薬・減量・変更は、治療施設の指示および最新の電子添文・院内プロトコルを優先してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人