倦怠感のCTCAE評価と薬局対応

🩺 副作用・CTCAE評価

倦怠感

「どのくらいつらいか」だけでなく、休息で改善するか、買い物・調理・仕事、入浴・更衣などの日常生活へどの程度影響しているかで評価します。倦怠感は抗がん薬の副作用である一方、感染、貧血、脱水、内分泌障害など治療が必要な病態のサインにもなります。

  1. 1.Grade評価
  2. 2.警告症状
  3. 3.原因を確認
  4. 4.施設へ共有

● 休息による改善と日常生活への影響で評価

01

CTCAEグレード評価

重症度CTCAE v6.0薬局での聞き取り例
Grade 1
軽度
休息により改善する倦怠感「休む、横になる、眠ることで普段に近い状態へ戻れますか?」
Grade 2
中等度
休息で改善せず、手段的ADLを制限する「買い物、調理、掃除、仕事、外出が難しくなりましたか? 入浴や着替えは一人でできますか?」
Grade 3
高度
休息で改善せず、セルフケアADLを制限する「入浴、着替え、食事、トイレなど身の回りのことに手助けが必要ですか?」

※「休息」について
CTCAEでは、休息の具体的な時間は規定されていません。座る、横になる、昼寝をする、夜間に眠るなど、患者さんが普段行う休息の後に、倦怠感が明らかに軽くなり、元の活動を再開できるかで確認します。休んだ時間の長さよりも、休息後の改善とADLへの影響を重視して評価します。

※ NCI CTCAE v6.0「Fatigue」の成人Gradeをもとにしています。Grade 4・5の設定はありません。CTCAEでは原因が判明した場合、最終診断・原因となる有害事象も記録するよう示されています。

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倦怠感だけで済ませず、当日中の連絡を検討する所見

  • 38℃以上の発熱、悪寒、感染を疑う症状
  • 新しい息切れ、胸痛、動悸、失神・前失神
  • 意識変化、強い眠気、立てない、歩けない、転倒
  • 嘔吐・下痢・摂取不良、尿量低下、強い口渇や立ちくらみ
  • 黒色便・血便・出血、顔面蒼白を伴う強い倦怠感
  • 免疫チェックポイント阻害薬使用中または終了後の急な倦怠感に、頭痛、悪心、食欲不振、低血圧、筋力低下などを伴う

好中球数や検査値が不明でも、発熱・循環呼吸症状・意識変化を伴う場合は、次回受診を待たず治療施設の指示につなげます。

02

患者から確認する項目

✓

強さだけでなく「いつから・何ができないか」を聞く

  • 発現と経過:いつから、急に/徐々に、改善・悪化
  • 治療との関係:薬剤名、投与日、何日目に強いか
  • 休息の効果:横になる・睡眠で改善するか
  • 手段的ADL:買い物、調理、掃除、仕事、外出
  • セルフケアADL:入浴、更衣、食事、排泄
  • 随伴症状:発熱、息切れ、動悸、めまい、痛み
  • 摂取・排泄:食事、飲水、嘔吐・下痢、尿量
  • 睡眠・心理:眠れない、昼寝、抑うつ、不安
  • 薬剤:オピオイド、睡眠薬、抗ヒスタミン薬等
  • 転倒・運転:ふらつき、反応低下、運転や就労への影響

「10段階なら何点か」も経時変化には有用ですが、CTCAEのGrade判定は休息による改善とADLへの影響を中心に行います。

03

原因を一つに決めつけない

がん関連倦怠感は多因子性です。薬局では診断を確定するのではなく、治療時期、随伴症状、服薬状況を整理し、検査や診察が必要な原因を見逃さないことが役割です。

治療・がんそのもの

化学療法、放射線療法、手術、内分泌療法、分子標的薬、免疫療法はいずれも倦怠感の原因になり得ます。がんの進行、疼痛、炎症も影響します。

貧血・感染・脱水・栄養

息切れや動悸、発熱、摂取不良、嘔吐・下痢、体重減少を確認します。血算、炎症反応、電解質などの評価が必要になることがあります。

内分泌・代謝異常

甲状腺、副腎、下垂体の機能異常、低ナトリウム血症、高カルシウム血症、血糖異常などでも倦怠感が生じます。ICI治療歴がある場合は投与終了後も注意します。

心肺・神経・筋症状

心機能障害、肺障害、低酸素、筋炎、重症筋無力症様症状などを鑑別します。息切れ、胸痛、筋力低下、嚥下困難、眼瞼下垂は早めに共有します。

薬剤性

オピオイド、睡眠薬・抗不安薬、鎮静性抗ヒスタミン薬、制吐薬、抗うつ薬などの眠気・ふらつきを確認します。自己判断で中止せず、用量や服用時刻を共有します。

睡眠・活動・心理面

不眠、日中の長い睡眠、活動低下、抑うつ、不安、社会的負担は倦怠感を悪化させます。身体的原因を除外せず、複数要因として整理します。

04

薬局でできる対応

+

原因評価と安全を優先し、生活を調整する

  • 発現日・強い時間帯・治療日との関係を記録する
  • 重要な活動を体力のある時間帯へまとめる
  • 家事や移動を分け、家族・周囲へ支援を依頼する
  • 日中の休息は短時間にし、夜間睡眠を整える
  • 無理のない歩行等を、治療施設と相談して続ける
  • 少量頻回の食事と飲水、体重・尿量を確認する
  • 眠気・ふらつきを起こす薬と服用時刻を点検する
  • 強い倦怠感時は運転・高所作業を避ける

発熱、脱水、貧血、心肺症状、内分泌障害などが疑われる場合は、運動やセルフケアの提案より先に治療施設へ連絡します。活動量は患者の状態と治療方針に合わせて個別に調整します。

薬やサプリメントだけで改善しようとしない

がん関連倦怠感には標準的な薬物療法が確立しているわけではありません。ASCO・SIOガイドラインでは、治療中の運動、認知行動療法、マインドフルネス、太極拳・気功などが推奨されています。一方、L-カルニチン、抗うつ薬、覚醒促進薬、精神刺激薬のルーチン使用は推奨されていません。薬局から一律にサプリメントを勧めず、相互作用や治療への影響を確認します。

05

Grade別に対応を判断する

Grade 1が疑われる

休息で改善する

  • 治療日との関係と随伴症状を確認
  • 活動と休息、睡眠、摂取を調整
  • 悪化や長期化があれば施設へ共有

Grade 2が疑われる

休んでも改善せず、買い物・調理等を制限

  • 原因・警告所見を再評価
  • 次回受診を待たず治療施設へ共有
  • 服薬・検査・支持療法の確認を依頼

Grade 3・警告症状

入浴・更衣・食事・排泄に介助が必要

  • 速やかに治療施設へ連絡
  • 一人での移動や運転を避ける
  • 施設の指示に従い受診へつなげる

06

治療施設へ連絡する目安

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早めの連絡を検討

  • Grade 2以上が疑われる、または短期間に明らかに悪化した
  • 休息・睡眠で改善せず、数日以上続いている
  • 発熱、呼吸循環症状、意識変化、転倒などを伴う
  • 摂取・飲水低下、嘔吐・下痢、尿量低下、体重減少がある
  • ICI治療歴があり、急な倦怠感や内分泌・神経筋症状を伴う
  • 眠気・ふらつきが強く、薬剤調整や検査が必要と考えられる
治療施設へ伝える項目
  • 発現日、経過、治療薬・投与日との時間関係
  • 休息で改善するか、強い時間帯、0~10の程度
  • 買い物・調理・仕事、入浴・更衣等への具体的な影響
  • 発熱、息切れ、動悸、めまい、疼痛、頭痛、筋力低下等
  • 食事・飲水量、嘔吐・下痢、体重、尿量
  • 睡眠、日中の休息、活動量、心理症状
  • 服用薬、服用状況、眠気・ふらつき、薬局で推定したGrade
トレーシングレポート・情報提供の記載例

○月○日の治療後○日目から倦怠感が出現しました。横になっても十分に改善せず、買い物と調理ができないため家族が代行していますが、入浴・更衣・食事・排泄は自立しています。CTCAE Fatigue Grade 2相当を疑います。体温○℃、息切れ・胸痛・意識変化はありません。食事は普段の○%、飲水○mL/日、尿回数○回/日です。併用薬○○による眠気も否定できません。貧血、感染、脱水、内分泌障害等の原因評価と治療・支持療法の見直しをご検討ください。

07

参考資料

このページの位置づけ
本ページは保険薬局での患者確認と治療施設との連携を支援するための一般情報です。倦怠感の診断、検査、抗がん薬・支持療法の調整は、治療施設の指示および最新の電子添文・ガイドラインを優先してください。

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