01
CTCAEグレード評価
咳(Cough)
| 重症度 | CTCAE v6.0 | 薬局での確認例 |
|---|---|---|
| Grade 1 軽度 | 軽度の症状で、市販薬などの非処方介入を要する | 咳はあるが生活への影響は小さい。市販の鎮咳薬などを必要としている |
| Grade 2 中等度 | 中等度の症状で、医学的介入を要する。手段的ADLを制限する | 処方治療が必要、または咳で買い物・調理・仕事・睡眠などに支障がある |
| Grade 3 高度 | 高度の症状で、セルフケアADLを制限する | 咳が激しく、食事・入浴・更衣など身の回りの動作にも支障がある |
※ CTCAE v6.0「Cough」にはGrade 4・5の設定がありません。ただし、咳に呼吸困難、低酸素、意識変化などを伴う場合は、咳のGradeにかかわらず原因疾患の緊急性を優先します。
痰を伴う咳(Productive cough)
痰がある場合は別項目も確認します。
CTCAE v6.0では、咳そのものの評価とは別に、痰の量とADLへの影響を「Productive cough」として評価します。
| 重症度 | CTCAE v6.0 | 薬局での確認例 |
|---|---|---|
| Grade 1 | 時折、少量の痰を伴う咳 | 痰は少量で、ときどき出る程度 |
| Grade 2 | 中等量の痰を伴い、手段的ADLを制限する | 痰の処理や咳のため、外出・家事・仕事などに支障がある |
| Grade 3 | 持続的または多量の痰を伴い、セルフケアADLを制限する | 痰が持続・多量で、食事や入浴など身の回りの動作にも支障がある |
02
最初に緊急性を確認する
当日中の連絡または緊急対応を検討する所見
- 新たな息切れ・呼吸困難、SpO₂低下を伴う
- 安静時にも息苦しい、会話が続かない、急速に悪化している
- 発熱、悪寒、強い倦怠感を伴う
- 突然の胸痛、血痰、失神、片脚の腫れ・痛みを伴う
- 顔面・口唇・舌の腫れ、喘鳴、じんましんを伴う
- 多量の血痰、意識変化、唇や爪の色の変化がある
「咳がGrade 1だから様子を見る」と判断せず、随伴症状から肺障害・感染症・血栓症などの緊急性を評価します。
03
患者から確認する項目
発現と経過
いつからか、新規か以前からか、突然か徐々にか、回数や強さが増えているかを確認します。
乾性か湿性か
乾いた咳か痰を伴うか。痰があれば色、量、粘り、におい、血液混入の有無を確認します。
呼吸状態
息切れ・呼吸困難、喘鳴、胸痛を確認し、どの動作で出るか、安静時にもあるかを聞きます。
随伴症状
発熱、悪寒、倦怠感、鼻汁、咽頭痛、胸やけ、むせ、浮腫、体重増加などを確認します。
発現する場面
日中・夜間、横になった時、食事中・食後、服薬後、運動時など、咳が出やすい状況を確認します。
治療・服薬歴
抗がん薬の名称・最終投与日、胸部放射線治療歴、ACE阻害薬、吸入薬、鎮咳薬・去痰薬の使用状況を確認します。
04
原因を一つに決めつけない
薬剤性肺障害・肺臓炎
乾いた咳、息切れ、発熱などで発症します。免疫チェックポイント阻害薬では投与終了後も注意します。
感染症
発熱、悪寒、膿性痰、全身状態の悪化を確認します。好中球減少時は軽い症状でも早めに共有します。
原疾患・胸水・気道病変
がんの進行、胸水、気道狭窄などでも咳が生じます。嗄声、血痰、体位との関係も共有します。
心不全・肺血栓塞栓症
横になると増える咳、浮腫、体重増加、突然の息切れ・胸痛などを伴う場合は緊急性を評価します。
上気道・気道疾患
後鼻漏、喘息、COPD、アレルギーなどを確認します。喘鳴や吸入薬の使用回数増加にも注意します。
逆流・誤嚥・併用薬
食後・就寝時の咳、胸やけ、食事中のむせを確認します。ACE阻害薬など併用薬による咳も鑑別します。
05
薬局での初動とGrade別対応
| 評価 | 薬局での対応の目安 |
|---|---|
| Grade 1相当 | 新規発症・悪化、肺障害リスク薬の使用、発熱や息切れの有無を確認します。原因に応じて治療施設への共有を検討します。 |
| Grade 2相当 | 処方治療を要する、または生活・睡眠に支障がある状態です。原則として治療施設へ連絡し、診察・検査の要否を確認します。 |
| Grade 3相当 | セルフケアに影響する激しい咳では、呼吸状態と随伴症状を確認し、速やかに治療施設へつなぎます。 |
患者へ伝えること
- 新たな咳や悪化した咳を、次回受診まで我慢しない
- 体温、咳が出る時間帯、痰の色・量、息切れの有無を記録する
- 水分摂取が可能なら、少量ずつこまめに取る
- 煙、強い香り、冷気など咳を誘発する刺激を避ける
- 自己判断で抗がん薬を中止・再開しない
鎮咳薬だけで経過を見ない:原因不明の新しい咳に、残薬の鎮咳薬・抗菌薬・ステロイドを自己判断で使用すると、受診が遅れる可能性があります。原因評価と施設への連絡を優先します。
06
治療施設へ伝える項目
- 咳の発現日、経過、新規か悪化か
- 乾性か湿性か、痰の色・量・血液混入
- 息切れ・呼吸困難、発熱、胸痛などの随伴症状
- 体温、SpO₂、脈拍と普段との差
- 睡眠、仕事、家事、セルフケアへの影響
- 抗がん薬の名称、最終投与日、胸部放射線治療歴
- 使用した鎮咳薬・去痰薬・吸入薬と効果
トレーシングレポート・電話連絡例
○月○日から乾性咳嗽が出現し、夜間も咳で目が覚め、家事に支障があります。処方治療が必要と考え、CTCAE「Cough」Grade 2相当と評価しました。体温○℃、SpO₂○%(普段○%)、安静時呼吸困難はありませんが、階段で新たな息切れがあります。痰・血痰・胸痛はありません。治療薬○○の最終投与は○月○日です。薬剤性肺障害を含む評価と、本日の受診要否をご確認ください。
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関連する副作用
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参考文献
本ページは薬局での情報整理と治療施設への連携を支援するもので、診断や治療方針を代替するものではありません。施設ごとの連絡基準や患者指示がある場合は、それを優先してください。