食欲不振のCTCAE評価と薬局対応

🩺 副作用・CTCAE評価

食欲不振

「食欲がない」だけでなく、普段の何割食べられているか、飲水量、体重変化、栄養補助の必要性から重症度を評価します。悪心・口腔粘膜炎・味覚変化・便秘など介入可能な原因を探し、脱水、急速な体重減少、通過障害や感染を疑う所見があれば早めに治療施設へつなげます。

  1. 1.Grade評価
  2. 2.摂取・体重確認
  3. 3.原因・対応
  4. 4.施設へ連絡

● 食習慣と栄養介入の必要性で評価

01

CTCAEグレード評価

重症度CTCAE v6.0をもとにした評価薬局での聞き取り例
Grade 1
軽度
食習慣の変化を伴わない食欲低下。食欲は落ちたが、食べる量・回数は普段とほぼ同じ。
Grade 2
注意・要連絡
有意な体重減少や低栄養はないが経口摂取が変化し、経口栄養補助食品を要する。食事量が明らかに減り、栄養補助飲料等で補う必要がある。
Grade 3
高度・速やかに連絡
有意な体重減少または低栄養を伴う(例:必要なカロリー・水分を経口で十分摂れない)。経管栄養または静脈栄養を要する。食事や水分がほとんど取れず、体重減少・低栄養が進み、経口摂取だけでは維持できない。
Grade 4
生命を脅かす
生命を脅かす状態。緊急の医学的介入が必要。重度の脱水・代謝異常等を伴い、緊急対応を要する。
Grade 5
死亡
食欲不振に関連する死亡。―

※ NCI CTCAE v6.0「Anorexia」の成人Gradeをもとに、薬局で聞き取りやすい表現を補足しています。体重減少と脱水は別のCTCAE項目でも評価します。目安として体重減少は治療前から5%以上でGrade 1、10%以上でGrade 2、20%以上でGrade 3に相当します。

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食事の工夫より先に連絡を考える所見

  • 飲水できない、飲んでも吐く、尿量低下・口渇・立ちくらみ・意識変化がある
  • 強い腹痛・腹部膨満、繰り返す嘔吐、便もガスも出ない
  • 発熱・悪寒、強い倦怠感、急速な全身状態の悪化がある
  • 飲み込みにくい、むせる、食物がつかえる、強い口腔・咽頭痛がある
  • 急速な体重減少、歩行困難、日常生活に必要な動作が難しくなっている

免疫チェックポイント阻害薬使用中の食欲不振に、強い倦怠感、悪心・嘔吐、低血圧、頭痛、意識変化などを伴う場合は、下垂体炎・副腎機能不全等も考え、速やかに治療施設へ連絡します。

02

患者から確認すること

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Assessment

  • 発現時期
    治療開始・投与日との関係、急性か持続性か
  • 食事量
    普段の何割か、回数、固形食、栄養補助食品
  • 水分量
    1日の飲水、嘔吐、尿回数・尿色、口渇
  • 体重
    治療前・現在・1週間前、減少率と速度
  • 食べられない理由
    食欲、早期満腹、におい、味、痛み、つかえ
  • 消化器症状
    悪心・嘔吐、口内炎、便秘・下痢、腹痛
  • 全身・心理症状
    発熱、倦怠感、痛み、不眠、抑うつ・不安
  • 薬剤・支持療法
    抗がん薬、オピオイド、制吐薬、服薬状況と効果

「半分くらい」など具体的な摂取割合と、直近の体重を数値で聞きます。浮腫や腹水があると体重減少が隠れるため、衣服のゆるみ、筋力、活動量の変化も確認します。

03

原因を整理する

治療関連の症状

悪心・嘔吐、口腔粘膜炎、口腔乾燥、味覚・嗅覚変化、便秘・下痢、疼痛、倦怠感は食事量を減らします。原因症状への支持療法が十分かを確認します。

通過障害・局所病変

嚥下障害、食道・胃腸の狭窄や閉塞、腹水、胃内容排出遅延などでは、食事指導だけで対応せず評価が必要です。つかえ、むせ、腹痛、膨満、嘔吐を確認します。

全身・代謝・心理

感染、脱水、高カルシウム血症、低ナトリウム血症、甲状腺・副腎機能異常、痛み、抑うつ・不安等を鑑別します。急な変化や全身症状は施設へ共有します。

がん悪液質

食欲低下、体重・筋肉量減少、炎症・代謝変化が複合する病態です。単に摂取量を増やすだけでは改善しないことがあり、早期の栄養・症状評価と多職種介入が重要です。

04

薬局でできる対応

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少量でも取りやすくする工夫

  • 少量・頻回
    3食にこだわらず2~3時間ごとに少量
  • 好調な時間
    食欲が比較的ある時間に主食・蛋白質を取る
  • エネルギー密度
    少量でエネルギー・蛋白質を補える食品を選ぶ
  • におい対策
    冷たい料理、調理済み食品、換気等を試す
  • 飲みやすい形
    スープ、ヨーグルト、栄養補助飲料等を検討
  • 記録
    食事・水分・体重・随伴症状を簡潔に記録

無理に食べさせることや、一律の「健康食」「食事制限」を優先しません。糖尿病、腎・心機能障害、嚥下障害等がある場合は個別調整が必要です。経口栄養補助食品は嗜好・症状・治療方針を踏まえ、管理栄養士や治療施設と連携します。

支持療法を点検する

  • 悪心・嘔吐:制吐薬の定期・頓用、服用時刻、効果、便秘等の副作用を確認する
  • 口腔症状:疼痛、粘膜炎、口腔乾燥、味覚変化に応じ口腔ケアと処方を確認する
  • 便通・疼痛:便秘、腹痛、オピオイド関連症状と対策を確認する
  • 服薬負担:錠数、服用タイミング、つかえ、服薬後の悪心が継続を妨げていないか確認する
食欲改善薬・栄養療法の位置づけ

薬物療法、経腸栄養、静脈栄養の適否は、原因、予後、消化管機能、治療目標、有害事象を踏まえて治療施設が判断します。食欲不振だけを根拠に薬局から開始・増量を勧めず、摂取量・体重減少・原因症状を具体的に共有します。

05

Grade別に対応を判断する

Grade 1が疑われる

食事量は保たれている

  • 原因症状と支持療法を確認
  • 少量頻回・取りやすい食品を提案
  • 摂取量と体重を継続記録

Grade 2が疑われる

摂取が変化し栄養補助を要する

  • 次回受診を待たず施設へ共有
  • 体重・脱水・原因症状を再評価
  • 管理栄養士等との連携を検討

Grade 3以上・警告症状

必要量を経口摂取できない

  • 速やかに治療施設へ連絡
  • 脱水・感染・閉塞等の緊急性を確認
  • 施設の指示に従い受診へつなげる

06

治療施設へ連絡する目安

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早めの連絡を検討

  • Grade 2以上が疑われる、または摂取量低下が数日続く
  • 体重が治療前から5%以上減少した、または短期間に減り続ける
  • 飲水不足、尿量低下、立ちくらみ等の脱水所見がある
  • 悪心・嘔吐、口内炎、嚥下障害、便秘、疼痛等で食べられない
  • 発熱、強い倦怠感、腹痛・膨満、意識変化等を伴う
  • 次回治療前に栄養評価・支持療法・処方の見直しが必要である
治療施設へ伝える項目
  • 発現日、治療薬・投与日との時間関係
  • 普段に対する食事摂取割合、食事回数、栄養補助食品
  • 飲水量、嘔吐、尿量・尿色、口渇・立ちくらみ
  • 治療前・現在・直近の体重、減少率と期間
  • 食べられない理由と随伴症状、日常生活への影響
  • 支持療法薬の名称・用法・服用状況・効果・副作用
  • 薬局で推定したGradeと行った説明
トレーシングレポート・情報提供の記載例

○月○日の治療後から食欲不振が続き、食事摂取量は普段の約40%、飲水量は約○mL/日です。治療前○kgから本日○kgへ○%減少しています。経口栄養補助飲料で補っていますが、悪心と早期満腹感があり、外出を控えています。嘔吐・発熱・腹痛はなく、尿回数は○回/日です。CTCAE Grade 2相当を疑います。原因症状、栄養状態および支持療法の評価をご検討ください。

07

参考資料

このページの位置づけ
本ページは保険薬局での患者確認と治療施設との連携を支援するための一般情報です。食欲不振の診断、抗がん薬・支持療法の調整、食欲改善薬や人工栄養の適応判断は、治療施設の指示および最新の電子添文・ガイドラインを優先してください。

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