痛みと日常生活への影響からGradeを評価
手足症候群では、皮膚所見だけでなく「痛み」と「日常生活への影響」を確認します。フッ化ピリミジン系などによるHFSと、マルチキナーゼ阻害薬によるHFSRでは、現れ方と支持療法の重点が異なります。
- 1.Grade評価
- 2.追加確認
- 3.原因薬を確認
- 4.対応・施設連絡
01CTCAEグレード評価
| 重症度 | CTCAE v6.0をもとにした評価 | 薬局での聞き取り例 |
|---|---|---|
| Grade 1軽度 | 発赤、浮腫、角化などの軽微な皮膚変化があるが、痛みはない。 | 赤みや硬さはあるが、歩行、家事、仕事などは普段どおりできる。 |
| Grade 2注意・要連絡 | 皮むけ、水疱、出血、亀裂、浮腫、角化などに痛みを伴う、または手段的ADLが制限される。 | 歩行、買い物、調理、掃除、仕事、靴を履く、ふたを開けるなどに支障がある。 |
| Grade 3高度・速やかに連絡 | 高度な皮膚変化に痛みを伴う、または身の回りのADLが制限される。 | 入浴、着替え、食事、排泄など、自分の身の回りの動作にも支障がある。 |
✓Grade評価のコツ
「痛いですか?」だけで終わらせず、できなくなった動作を具体化します。「歩く距離が短くなった」「包丁を握れない」「ボタンを留めにくい」などを聞くと、Grade 2と3を評価しやすくなります。
CTCAEのGradeはHFSとHFSRに共通して使用できます。ただし、見た目が軽くても圧痛や歩行障害が強い場合があります。
!この時点で治療施設へ連絡を考える所見
- 痛みがある、または日常生活に支障がある
- 水疱、出血、びらん、潰瘍、強い亀裂がある
- 歩行困難、手を使う動作の著しい制限がある
- 発熱、膿・浸出液、悪臭、急速に広がる発赤がある
※NCI CTCAE v6.0「Palmar-plantar erythrodysesthesia syndrome」をもとに、成人患者について薬局で聞き取りやすい表現を補足しています。例示した動作だけでGradeを確定せず、皮膚所見、痛み、ADLを総合して評価します。
02患者から確認すること
✓Assessment
- 原因薬・治療時期
薬剤名、開始日、何コース目か、直近の増減量 - 発現時期・経過
いつ始まり、前回より悪化または改善しているか - 部位・左右差
手掌、足底、踵、母趾球、小趾球、指先 - 皮膚所見
発赤、腫脹、角化、亀裂、水疱、出血、びらん - 痛み・感覚異常
しびれ、ヒリヒリ感、灼熱感、圧痛 - 日常生活への影響
歩行、靴、家事、仕事、入浴、着替え - 支持療法
外用薬の種類、塗布部位・回数、残薬、刺激感 - 感染を疑う所見
発熱、膿、浸出液、悪臭、急速な悪化
可能であれば、患者本人または家族に手掌・足底の写真を撮影してもらうと、経時変化と治療施設への情報提供に役立ちます。
03HFSとHFSRを分けて考える
電子添文やCTCAEでは同じ「手足症候群」「手掌・足底発赤知覚不全症候群」として扱われることがありますが、薬局での観察では次の違いが重要です。
- 手掌・足底に比較的びまん性、左右対称に現れやすい
- 発赤、腫脹、乾燥、落屑がみられる
- しびれ、ヒリヒリ感、灼熱感が先行することがある
- 反復・累積投与に伴って目立つことがある
- 進行すると亀裂、水疱、疼痛を伴う
- 治療開始後数日〜数週の早期に現れやすい
- 踵、母趾球、小趾球、指先など圧迫・摩擦部位に局在しやすい
- 黄色調の角化、胼胝様変化、限局性発赤、圧痛が目立つ
- 足底から症状が現れることがある
- 皮膚変化が小さくても痛みが強い場合がある
| 比較点 | HFS | HFSR |
|---|---|---|
| 発現 | 反復・累積投与後に目立つことがある | 治療開始後、数日〜数週の早期に多い |
| 分布 | 比較的びまん性、左右対称 | 圧迫・摩擦部位に限局しやすい |
| 主な所見 | 発赤、腫脹、乾燥、落屑 | 圧痛、限局性発赤、角化、胼胝様病変 |
| ケアの重点 | 保湿、皮膚バリア維持、刺激回避 | 治療開始前からの角化対策、圧分散、早期フォロー |
!HFSRは早期の角化・圧痛を見逃さない
赤みが強くなる前から、靴が当たる場所、踵、母趾球・小趾球、指先に角化や圧痛が現れることがあります。マルチキナーゼ阻害薬の開始初期は、手だけでなく足底も確認します。
※薬剤名は代表例です。ここにない薬剤でもHFS・HFSRが生じることがあります。薬剤ごとの電子添文・適正使用ガイドを確認してください。
04予防・支持療法を確認する
HFS|保湿と刺激回避を軸に
- 治療開始前から乾燥、亀裂、角化、爪の状態を確認する
- 手洗い・入浴後や就寝前などに保湿する
- 熱い湯、摩擦、長時間の歩行・立位、強く握る作業を避ける
- 足に合う柔らかい靴、締めつけない靴下、中敷きを活用する
- 症状発現後は痛みとADLへの影響を継続して確認する
尿素製剤の位置づけ
カペシタビンによるHFSの予防効果は試験間で一貫していません。保湿・刺激回避を基本とし、尿素製剤は角化の程度、処方指示、施設方針に沿って使用状況を確認します。
HFSR|早期から角化と圧を管理
- 治療開始前に足底の胼胝、角化、鶏眼、亀裂、白癬を確認する
- 靴の当たりを確認し、中敷きなどで圧を分散する
- 保湿剤・尿素製剤などの予防的指示があるか確認する
- 開始後数週は、圧痛、限局性発赤、角化を早い段階から確認する
- 歩行痛があれば、見た目が軽くても治療施設へ情報提供する
尿素製剤の位置づけ
ソラフェニブでは、治療開始時からの尿素クリーム使用でHFSRを減らした試験がある一方、累積発現率に有意差を認めなかった試験もあります。早期から使用されることがありますが、濃度・回数・塗布部位は処方および施設方針を確認します。
共通するセルフケア
+薬局で確認・説明すること
- 保湿
こすらずやさしく塗り、処方された回数・部位を守る - 圧迫を避ける
柔らかい靴、厚めの靴下、圧を分散する中敷きを選ぶ - 摩擦を避ける
長時間の歩行、強く握る作業、こする洗浄を控える - 熱を避ける
熱い風呂やシャワー、長時間の温浴を避ける
胼胝や角化部を患者自身が刃物などで削らないよう説明します。処置が必要な場合は、治療施設・皮膚科などへ相談します。
!尿素製剤を使用するときの注意
潰瘍、びらん、傷面へ直接すり込まないようにします。炎症や亀裂がある部位では刺激感が生じることがあるため、塗布部位や外用薬の使い分けを治療施設へ確認します。
尿素製剤の予防研究を詳しく見る
ソラフェニブ:2015年の無作為化試験では、治療開始日から10%尿素クリームを使用した群で、12週以内のHFSRおよびGrade 2以上の発現が少なく、発症までの期間も延長しました。2020年の二重盲検試験では累積発現率に統計学的有意差はありませんでしたが、2週時点のGrade 2以上は尿素群で少ない結果でした。
カペシタビン:2025年の無作為化試験では、尿素クリームによるHFS発症予防、カペシタビンの用量変更抑制、発症遅延は示されませんでした。HFSとHFSRでエビデンスを分けて解釈する必要があります。
05薬局での対応を判断する
痛みなし・ADL制限なし
- 支持療法の実施状況を確認
- 圧・摩擦・熱を避ける
- 新規発現や悪化時は施設の指示に沿って連絡
- HFSRでは角化・圧痛を短い間隔で確認
痛みあり・手段的ADLに影響
- 次回受診まで待たず治療施設へ情報提供
- 次回内服前に判断が必要なら速やかに確認
- 支持療法の使用状況と推定Gradeを伝える
強い痛み・身の回りのADLに影響
- 当日中を目安に治療施設へ連絡
- 水疱、出血、びらん、潰瘍、歩行困難を報告
- 発熱・膿・急速な悪化は速やかな受診へつなげる
!抗がん薬は自己判断で中止・減量しない
抗がん薬の継続、休薬、減量、再開は、薬剤ごとの電子添文・適正使用ガイドと患者の治療状況をもとに治療施設が判断します。患者には「痛みや生活への影響を伝え、次の服用をどうするか確認してください」と説明します。
06治療施設へ連絡する目安
!早めの連絡を検討
- Grade 2以上が疑われる
- 軽度でも短期間で悪化している、または新規発現時の連絡指示がある
- 支持療法を適切に使用しても改善しない
- 水疱、出血、びらん、潰瘍、強い亀裂がある
- 発熱、膿、浸出液、悪臭など感染が疑われる
- 次回の抗がん薬服用前に継続可否の確認が必要である
治療施設へ伝える項目
- 原因と考えられる抗がん薬、1回量・1日量
- 治療開始日、何コース目か、服薬状況、次回内服予定
- 症状の発現日と悪化・改善の経過
- 症状部位と左右差
- 発赤、腫脹、角化、胼胝、亀裂、水疱、出血、びらんの有無
- 痛みの有無と、制限された具体的な動作
- 推定したCTCAE Grade
- 感染を疑う所見の有無
- 保湿剤、尿素製剤、外用ステロイドなどの使用状況
トレーシングレポート・情報提供の記載例
レゴラフェニブ開始12日目。両足の踵と母趾球に限局した角化と発赤があり、歩行時痛のため買い物を中断しています。入浴・着替えは可能で、Grade 2相当を疑います。10%尿素クリームは1日2回使用していますが、右踵に亀裂があり刺激感があります。次回内服前の対応をご指示ください。
07参考資料
- National Cancer Institute. Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)v6.0. Published July 22, 2025.
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群」(令和元年9月改定).
- Kwakman JJM, et al. Management of cytotoxic chemotherapy-induced hand-foot syndrome. Oncol Rev. 2020;14:442.
- McLellan B, et al. Regorafenib-associated hand-foot skin reaction: practical advice on diagnosis, prevention, and management. Ann Oncol. 2015;26:2017-2026.
- Ren Z, et al. Randomized controlled trial of the prophylactic effect of urea-based cream on sorafenib-associated hand-foot skin reactions. J Clin Oncol. 2015;33:894-900.
- Lee YS, et al. Effect of urea cream on sorafenib-associated hand-foot skin reaction. Eur J Cancer. 2020;140:19-27.
- Wongkraisri C, et al. Randomized controlled trial of topical urea-based cream in preventing capecitabine-associated hand-foot syndrome. BMC Cancer. 2025;25:275.
- 尿素クリーム20%「日医工」電子添文(PMDA).
このページの位置づけ
本ページは保険薬局での患者確認と治療施設との連携を支援するための一般情報です。個別患者の診断、抗がん薬の休薬・減量・再開、外用薬の選択は、治療施設の指示および最新の電子添文・適正使用ガイドを優先してください。
最終確認:2026年9月
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